作中のクエストとは内容が違う場合がございます。というか違います。
ドロテアという仲間を得た私は、金策のためノルドの古代遺跡アンガルブンデへ潜ることを提案した。
「アンタ宿屋のオーナーなのに、お金に困ってるの?」
「困ってるって程じゃないけど、趣味でやってるような宿屋だから儲けは出ないのは確かね。それよりも、冒険者の金策といえば山賊狩りか遺跡漁りみたいなトコロあるじゃない?」
「それは否定しないけど、安直な気もするわ」
「いいからいいから、そう遠くない所に手ごろな遺跡があるのよ」
私は、半ば強引にドロテアを引っぱりアンガルブンデへと出掛けた。
遺跡には先客がいた。
メドレシ・ドランというそのダンマーの女性は、アンガルブンデの奥深くに眠るという秘宝を求めて採掘員を雇い来たという。
「富と財産にあと少しで手が届くのに、彼らは死体を怖がり逃げ出してしまったんです・・・」
どうやら雇った採掘員は全員逃げ出してしまい、ひとり入り口で立ち往生しているらしい。
「でも、メドレシさん。遺跡なんだから死体の一つや二つぐらい覚悟してなかったんですか?」
「もちろんそのくらいの覚悟はしていたわ。なのに弱虫よ、一人残らず。向こうの奴はまだ歩き回ってるのに」
は?歩き回ってる?
「そうだ。あなた達、宝を手に入れる手伝いをしてくれたら、山分けにしますよ」
「いやいや、ちょっと待って。"歩き回ってる"って死体がですか?」
「ええ、まだ歩き回ってると思います。そこの部屋を通り抜けないと宝のある部屋にはたどり着けません。」
それは流石に普通の採掘員は逃げ出してもしょうがないと思うぞ。
まあ、普通の採掘員ならともかく冒険者としてはそのくらいで逃げ出していては話にならない。
私たちは彼女の申し出を受けて遺跡の奥へ進むことにした。元々そのつもりだったしね。
ドラウグル
ドラゴンがまだいたと言われる太古の時代に竜教団と呼ばれるドラゴンを崇拝する教団がいた。
ドラウグルは、その竜教団によって作り出されたゾンビの一種だとか死んでも教団の司祭を信奉する生ける屍だとか言われている。
そのドラウグルが遺跡の中では数多く動き回っていた。
とはいえ、ドラウグルの動きは鈍く、ドロテアと二人ならそうてこずる事もなくその数を減らしていく。ただの採掘員には厳しいと思うけどね。
おそらくは最後の一体であろうドラウグルに止めを刺すと、メドレシ・ドランを呼び寄せる事にした。
「アイナがそれでいいならアタシは構わないけど・・・あの人は山分けとか言ってたけど、下手すりゃ独り占めする気よ」
「うん、分かってる。でも、あとで揉めるよりはいいかなって、こちらはドラウグルの副葬品を漁ってそこそこ儲けになったし」
副葬品を漁るなんて罰当たりと思うなかれ、竜教団の信者なんて人類の敵みたいなもんだから別にいいのよ。
「そうね、その方がいいかもね」
ドラウグルを片付けた事を伝えるとメドレシ・ドランは遺跡の奥へと一目散に駆け出した。
「ついに宝が手に入った!私の手に!」
はやっ!
重装のドロテアだけならまだしも軽装の私も置いていかれる。
「メドレシさん、危ないですよ!遺跡の中は瓦礫とか落ちてたりするんですから!」
聞こえているのかいないのか、メドレシは足を緩めない。
メドレシさん・・・
「自業自得よ。アタシ達が気に病む必要は無いわ」
ドロテアはそう言ったが、後味の悪さは拭えない。
オブリビオン動乱の頃、帝都の魔術師大学が死霊術師によって危機に陥った時に似たような罠で命を落としたバトルメイジがいたという話がある。
敵の罠で命を落としたというならまだしも、欲に目がくらんで命を落とすなんて救いの無い話だわ。
「ま、アタシ達冒険者にとっては反面教師ね。」
遺跡の最奥部は竜教団のものと思われる不思議な壁と少しばかりの貴重品の入った宝箱があるだけだった。
秘宝と呼ぶには程遠い・・・少なくとも私たちと、おそらくはメドレシ・ドランにとっても。
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