2015年4月18日土曜日

似非プレイ記 ハートウッド工場

 ※ ドヴァキンかも知れないしそうではないかも知れない、冒険者として生きていける程度には特別な存在というロールプレイです。
 作中のクエストとは内容が違う場合がございます。というか違います。




 自宅の近くにあるハートウッド工場はリーフナーとグロスタの夫婦が経営する製材所だ。
グラルナハという両親思いの息子と三人仲良く暮らしていて、私もよく薪を買いに行くので仲良くさせてもらっている。
ところが、最近夫のリーフナーの姿が見えない。

 グロスタが言うには、リーフナーはブロークン・ヘルム・ホロウへ穀物の取引に行ったきりという事らしい。
「 彼が言うには、いくつかの農場や工場に市場の二倍の値段で買い取るっていう男達がやってきたらしいの」
「二倍の値段ねえ・・・リーフナーさんはその話を信じて出掛けたんですか?」
「ええ、在庫の木材を大量に持ってね。もし彼が帰らなかったら・・・ここを売り払うしかなくなるわ」
「それは困りましたね・・・」
  グラルナハも手伝いはしているがまだ小さい子供だ。グロスタひとりで製材所をやりくりするのは無理だろう。
 実際、ここ最近のグロスタは険しく疲れた顔をしている。
「グロスタさんが構わないのであれば、私がリーフナーさんを連れ戻しにブロークン・ヘルム・ホロウへ行きましょうか?」
「そうしてくれると助かるけど・・・でも、ひょっとしたら彼そこには居ないかもしれないわ」
 ん?なんだかちょっと引っかかる物言い。
「あ、いえ・・・もし彼がいなくても無理して探さなくていいわよ。そこまで迷惑はかけられないから」
 グロスタは、私の怪訝な表情を見て取り繕うとブロークン・ヘルム・ホロウの場所を教えてくれた。


 ブロークン・ヘルム・ホロウはリフテンを過ぎて東、モロウィンドへ向かう道の途中の山腹にあるらしい。
 何事も無ければ日帰りできるかもしれない。
 私は、いくつか荷物をまとめるとブロークン・ヘルム・ホロウへと出発した。

 リフテンを過ぎて少し歩いたところで野盗二人と戦っている女性を見つけた。
 あ、訂正・・・終わったわ。
「こいつらの仲間・・・じゃないみたいね」
 そう言うと女性は剣を収めた。
「ただの通りすがりよ。そういう貴女は賞金稼ぎ?」
「いいえ、アタシも、まあ・・・通りすがり。この先のブロークン・ヘルム・ホロウへ向かう途中だったんだけど、こいつらが襲ってきてね」
「え?貴女もブロークン・ヘルム・ホロウへ?」

 その女性が言うには、弟が勤めている工場に高値で買い取るという男達がやってきて、工場の主がブロークン・ヘルム・ホロウへ商品を持って出掛けたまま帰ってこないので探しにきたのだという。
「弟は仕事をまわすのにてんてこ舞いで工場から離れる事ができないから、アタシが探しにきたの」
「そう、こちらも似たような事情なの。ハートウッド工場の旦那さんが帰ってこなくてね。良ければ一緒に行かない?」
「そうして貰えるなら、こちらも助かるわ。どうやら、一筋縄ではいかない話みたいだし。」
「こちらこそ、貴女かなり腕が立つみたいだし心強いわ。私はアイナ、よろしく」
「アタシはドロテア、よろしくね」


「外では賊が見張りをしていたし、いよいよもって怪しくなってきたわね」
 ブロークン・ヘルム・ホロウの外で見張りをしていた二人の賊をあっさりと片付けるとドロテアはそう言った。
「リーフナーさん本当にこんな所に来たのかしら・・・?」
「中に入って確かめてみるしかないわね。たぶん戦闘になると思うけど大丈夫?」
 確かに彼女の言うとおり中にも賊がいるだろう。
「ええ、大丈夫。 ひとまず賊を倒すのが先、考えるのは後にするわ」
「ならいいわ。アタシは傭兵の経験もあるし戦闘はアタシの方が得意みたいだから前衛になるわ。アイナはサポートをお願い」
「わかったわ」

 中には賊の頭らしいオークがいた。
 忍び寄って不意打ちなんてのはドロテアは苦手らしく、早々に刃を交える事になった。
 いや、実際に刃を交えてるのはドロテアとオークで、私は離れて魔法でサポートに徹した。
「魔法はあまり得意じゃないのよね」
 攻撃魔法は雷撃しか知らない上に、他人を治癒する魔法は知らない。
 とはいえ、ドロテアは後の先を取る殆ど手傷を負わない堅い戦い方で追い詰めていく。
 オークが沈むのに、そう時間はかからなかった。
「私のサポートは必要なかったんじゃない?」
 剣を収めたドロテアに近付くと私はそう声をかけた。
「そんな事ないわ、雷撃で動きが鈍くなってたみたいだし。それよりも壁のこれ、気付いてた?」
 ドロテアは壁に釣り下がった取っ手を指差す。
「ええ、隠し部屋かしら。他には檻とか見当たらないし、その中みたいね」
 戦闘中にそんな所まで気が付くドロテアには感心するばかりだけど、今はこの中を確認するのが先。
「開けるわよ」
 ドロテアは、隠し部屋の入り口から死角になる位置に移動して取っ手を引いた。

「リーフナーさん・・・」
 隠し部屋の中は凄惨な光景が広がっていた。
 人の形を保っているのはリーフナーの遺体だけ。 他は、なんというか・・・。
「ひどい・・・」
 ドナテラは顔を背ける。おそらく彼女が探しに来た人間も・・・。
「もう出ましょう。これ以上ここにいる意味は無いわ」
 そう、意味は無い。リーフナーが持ってきたのだろう材木も持ち帰れる状態ではなかった。
 私はドロテアを促して外に出た。


 私たちはリフテンまで戻り、今日はそこで宿をとる事にした。
「グロスタさんになんて伝えよう・・・」
 宿屋ビー・アンド・バルブの一階の酒場のカウンターに座り食事を注文すると私はそうつぶやいた。
「グロスタさんって人があの人の奥さんなの?そのまま伝えるしかないと思うわよ」
 隣に座ったドロテアアが応える。
「リーフナーさんがいないんじゃハートウッド工場を売り払うしかないって・・・」
「アタシ達が、あの洞窟に行った時には既に手遅れだった。どうしようもなかったんだよ」
「でも・・・」
 私が言葉を継ごうとした時に宿屋の女将、アルゴニアンのキーラバが料理を運んできた。
「空腹だからそんな顔になるのよ。お腹を満たしましょうよ」
 キーラバはそう言って私たちの前に料理を並べるとカウンターの奥に引っ込む。
 彼女は口が悪い時が多いが、こちらが金を持っている限り愛想は良いし余計に口を挟む事もしない。
 「女将の言う通りよ。まずは、お腹を満たして・・・そうね、明日アタシもハートウッド工場まで付き合うわ。それまでには良い考えも浮かぶかもしれないわよ」
 そう言うと彼女は料理に手をつけたので、私も料理が冷めないうちに食べることにした。


 結局、ハートウッド工場にたどり着くまでに良い考えは浮かばず、ありのままを伝える事になった。
 リーフナーの死を聞いたグロスタは泣き崩れ、実はリーフナーの言ったことを信じておらず自分と息子を捨てていったのだと思っていたことを吐露し懺悔した。
「早く助けを送れば良かったのに、ただ座って時間を無駄にしていたなんて愚かね。たぶん、みんな私が悪いの・・・」
 かける言葉も無い。
 夫を信じていれば、あるいは二倍の値段で買い取るなんてうまい話に乗らなければ夫を失うことにはならなかったかも知れない。
 リーフナーとグロスタだけが悪い訳ではない、騙した方の人間が悪いのは分かってる、けれどもやり切れない気持ちでいっぱいだ。


「この工場を売り払わなければならないというのは本当ですか?」
「ちょっ!ドロテア!」
 突然、気配りに欠ける質問をするドナテラに私はあわてる。
「え、ええ・・・息子もまだ小さいですし、私一人ではとても・・・」
 グロスタは、ドロテアの態度を気にかけた様子も無く答える。
「なるほど、差し出がましい申し出かもしれませんが、私の弟は木地師としての修行中なのですが雇い主がいなくなってしまって困っているんです。修行も兼ねてこちらで働かせてはいただけませんか?」
 驚いた。ドロテアがこんな事を考えていたなんて。
「大変嬉しい申し出なのですが、ウチには人を雇う余裕は・・・」
「修行中の身ですから給金は多くはいただきません。ただ、切り出した木材の一部で器などを作らせていただくかもしれませんが」
「それなら、願ってもない事です。工場を売らなくて済みます」
 心なしかグロスタの表情がやわらいだ様に見える。
「それでは、弟に連絡します。今の職場を片付け次第こちらへ伺うと思いますので、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 グロスタは立ち上がり深々と頭を下げた。


「もう!あなた最高よ!」
 酒場でドロテアにハチミツ酒をごちそうして私は何度目かの歓声を上げた。
「もう、分かったから。大体、これから弟に話をしなきゃいけないんだから喜ぶのは早いってもんよ」
 少々・・・いや、ほんの少しだけ・・・八杯くらいだったかな?覚えてないけど。そんな私を見てドロテアもまた何度目かの同じセリフを返す。
「大丈夫よ!だって世の中には弟は姉には逆らってはいけないって決まりがあるって言うし!」
「ないわよ、そんな決まり。どこの世界にも」
「そうだ!ドロテアも弟さんもここに住んだらいいわ。実はここ、私がオーナーなの」
「へえ、そうなんだ。ハートウッド工場に近いし助かるわ」
「ドロテアは私と一緒に冒険する。弟さんは工場で働く。みんな幸せ。大団円ね!」
「うん、勝手に決めてるけど逆らえる雰囲気じゃないし、まんざらでもないからそれでいいわ」
「もう!ホントにあなた最高よ!」
「あ、また最初から?」

 次の日、二日酔いで起きられなかった私を置いてドロテアは弟の元へ向かい、その日のうちに良い返事を持って帰ってきてくれた。

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