※ 今回は盗賊ギルド関連のクエストではありません。
ブロークンタワー砦の中に潜入した私は、見回りのフォースウォーンに見つからないように砦の奥へと進んでいった。
彼らの日常は知らないけれど、なにか特別な警戒をしているように見える。
元々、フォースウォーンは非常に好戦的でリーチの民の古い伝統を守り原始的な生活を続けている自称"真のリーチの民"だ。
フョトラの父親と同じリーチの民で戦化粧が特徴的だけど文明的な生活を受け入れた彼らとは一線を画している。
略奪を旨として自分たちの(と称する)土地を燃やすことも厭わない、それは比較的近い系統の種族ブレトンにすら野蛮人と呼ばれているほどに荒々しい。
一対一なら勝てなくもないが、彼らの主な戦闘スタイルは両手に武器を持った二刀流という高火力の厄介なスタイルなので戦闘はできるだけ避けたい。
あ、盗賊ギルドでは基本的に殺人はご法度だけど、私の中ではこいつら野蛮人はオオカミとかサーベルキャットと同じ野生動物にカテゴリされているので殺すのは問題ないわよ。
「悪人に人権はない」ってどこかの魔術師も言ってるらしいし。
こ、これは…
砦の最奥にまで忍び込んだ私の目に入ったのは血塗れになったディベラの祭壇だった。
祭壇にはおびただしい量の肉と骨が積まれ、いたる所に血が飛び散り中央の大きなディベラ像もその美しい姿が赤く血に染まっている。
そして横の床には蠟燭と血で描かれた紋様と、紋様の中央に立っている男…あれはおそらくフォースウォーン・ブライアハートだ。
フォースウォーン・ブライアハートとは、ハグレイヴンという魔女によって人体改造を施されたフォースウォーンだ。
心臓の代わりにブライアハートという魔術的な物を埋め込まれているらしい。
ん?スリ盗る…か。試してみる価値はありそうね。
ブライアハートをスリ盗られたフォースウォーンは糸の切れた操り人形のようにあっさりと崩れ落ちた。 ひょっとしたらブライアハートとは死霊術の一種なんじゃないかとも思える。
死霊術も詳しいわけじゃないけれど心臓を抜かれるって事はどう考えても死んでしまうだろうし、死体をブライアハートで蘇らせているのか、それとも蘇らせた死体をブライアハートで維持させているんじゃないかと…いや、単なる予想だけど。
いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない。
奥に見える牢の中に小さな女の子がいる。彼女がフョトラだろう。
フォースウォーンの持っていた鍵で牢を開けると少女は怯えた様子で私に話しかけてきた。
「あの人達の仲間なの?お願い乱暴しないで」
あなたがフョトラね。私はあなたをマルカルスのディベラ聖堂に送り届けるために来たのよ。
「それじゃあ、あの人達が言った事は本当だったの?私は神の手に触れられたの?」
やっぱり、フォースウォーンはフョトラがディベラのシビュラに選ばれたことを知っていたのね。
「マルカルスにある大きな聖堂の不思議な話は聞いたことあるわ。でも、それを自分で見られるなんて夢にも思わなかった。この務めを命じられて光栄です。案内をお願いします」
まだ小さいのにしっかりしている。さすがシビュラに選ばれるだけはあるって感じかしらね。
フォースウォーンがどうやってフョトラの事を知っていたのかは分からないけれど、ディベラのシビュラに選ばれた彼女をかどわかし、この血だらけの禍々しい儀式でディベラの儀式を汚すつもりだったのは間違いない。
フォースウォーンたちがブライアハートを除いて女性しかだったのも関係しているのだろう。
ディベラの神官たちにフォースウォーンからフョトラを取り戻す力があるとは思えないし、衛兵たちを集めてここにたどり着くまでにフョトラが無事でいられた保証はない。
まるで私がフョトラを助け出す事まで何かしらの意思・・・たとえばディベラの意思が働いていたようにも思えてしまう。
「ねえ、またフォースウォーンに見つからないうちに聖堂へ急ぎましょう」
そうね、まだあなたを助け出したとは言えないものね。
フョトラに急かされ我に返った私は、彼女を連れ砦を脱出した。
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