"ステンダールの番人"
それはデイドラ、吸血鬼、ウェアウルフ、魔女、そしてその信奉者に"神の正義"をもたらす集団だ。
番人たちは、番人の間と呼ばれる場所に拠点を置きデイドラが現れる所に赴きその脅威に立ち向かうために生涯を捧げている。
番人の間で番人たちを取り仕切っているのは番人カルセッテ、鉄の戦槌でデイドラを狩り他の番人たちからも信頼されている女性だ。
そのカルセッテが他の番人たちとステンダールに祈りを捧げている時に彼女に話しかけてくる男がいた。
「カルセッテ。今のままでは番人たちは吸血鬼に攻め滅ぼされる。砦を修復して番人たちを鍛えなおすべきだ」
「またその話?」
およそ気遣いなどいう言葉とは無縁のその男の口調と態度にカルセッテは辟易といった顔を向ける。
「吸血鬼なんてデイドラに比べたら大した脅威じゃないわ。奴らの数はもう残り少ないはずよ」
「吸血鬼は狡猾だ。人にまぎれ隠れて痕跡を残さず人を襲っている」
「そんな話はあなた以外からは聞かないわね。何故あなただけそれが分かるの?あのイカれたお友達みたいにアーケイの声が聞こえるのかしら?」
まるで男が口からでまかせを言っていると言わんばかりに皮肉たっぷりのあざけた声を出す。
しかし、確かに吸血鬼の被害はここ数年は特に少なくなっておりカルセッテの態度も仕方ないように他の番人たちには映る。
「アーケイの声もステンダールの声も聞こえたことはない。聞こえるのは犠牲者の悲鳴だけだ」
カルセッテの皮肉に眉一つ動かす事無く男は応える。
「警告しているんだ。帰ってこない番人は少なくないと聞いている、そしてこんな場所では吸血鬼に襲撃されたらひとたまりも無い」
「それであの廃墟寸前の砦を修復しろっていうの?そんな金も人手も割く価値はあの砦にはないわ。どうしてもやりたいっていうのなら自分ひとりでやることね!」
そう強く言い切ると話は終わりとばかりにカルセッテは礼拝に戻った。
「お前が何故そこまで吸血鬼にこだわるのか分からんがタムリエルの脅威は吸血鬼だけじゃないんだ」
「最悪なのはデイドラだ」
「番人はデイドラとその信奉者を決して赦さない」
「ステンダールの慈愛がタムリエルの秩序と正義を守ってくださる」
「・・・・・・」
男は、もう何も言わずただフードを被り番人の間から静かに出て行った。
ただその歩みからは気落ちした様子は見えず、むしろ断固とした決意のようなものが感じられた。
第二紀の頃にリフテンの首長が所有していたという砦、山賊すら根城にする事なく長く撃ち捨てられている場所。
ここには必要なものは何も無い・・・だがそれでもいい、必要なものはこれから揃えていくとしよう・・・人も物も。
イスランの過去話。
返信削除面白い。