2015年7月5日日曜日

似非プレイ記 東から昇る その二

※ ドヴァキンかも知れないしそうではないかも知れない、冒険者として生きていける程度には特別な存在というロールプレイです。
作中のクエストとは内容が違う場合がございます。というか違います。




 ウィンドヘルムの港にある東帝都社に入って驚いた。
 なんというか・・・・・・何もない。
 ここに入ったのは初めてだけど、海運会社の倉庫といえば普通なら出入りする商品がうずたかく積まれているはずなのにそれらしい物が全く見当たらない。
 これは思ったよりも深刻な問題みたいだ。

「彼がそうじゃない?」
ドロテアが、倉庫の奥で物悲しげな背中で掃除をしている男を見つけた。
 人が入ってきたことに気付いているのかいないのか男は掃除を続けている。
「失礼、オルサス・エンダリオさんですか?」
 天下の東帝都社ともあろうものがひどい有様ね、と思ってても口には出さずに掃除をしている男に話しかける。
「哀れだろ?この状態がひどいことは分かってる」
 失礼、顔に出ていたらしい。

 オルサス・エンダリオは掃除をする手を休めて、苛立つ様子を隠そうともせずに話を続ける。
「海賊の襲撃が始まって以来、仕入れも出荷もままならない。当然ここに商品はなくなるって寸法だ」
「海賊の襲撃が?」
「ああ、そうだ。ハンマーフェルからヴァーデンフェル島にかけて、沿岸地帯を襲撃している。無事なのはシャッター・シールド家の船だけだ。奴らが裏で糸を引いているに違いない」
「じゃあ、そのシャッター・シールドとやらをどうにかすればいいんじゃない?」
「証拠が無い。それにシャッター・シールドの一族はここウィンドヘルムの権力を握る名家だ、下手に仕掛ければこちらが潰される」
 そんな事は分かってると両手を広げ首を振る。

 オルサス・エンダリオは単なる商人だ。
 シャッター・シールドを探り証拠を掴むとなれば非合法なやり方や手荒いやり方が必要になる場合もあるだろうが、帳簿のつけ方は知っていてもそんなやり方は知らないだろう。
 ましてや失敗が許されない状況とあってはなおの事手に余る。
 そこで、東帝都社とは何も関係ない"誰か"が証拠を掴んできてくれれば大助かりで商売を再開できて"誰か"に報酬を支払う事も厭わない。
 "誰か"も懐が潤い、東帝都社にコネが作れる。

「ああ、もちろん。"東帝都社と何の関係もない誰か"がそうしてくれるならいう事なしだ」
 東帝都社と何の関係もないの部分を強調してオルサス・エンダリオは報酬を約束した。
「じゃあ、近い将来にそんな幸運が訪れることを祈ってるわ」
 あくまで私たちとは無関係と言う体を装った小芝居でウィンクすると東帝都社を後にした。

 外に出るとそこらへんで働いているシャッター・シールドの従業員をつかまえて話を聞いてみた。
 幸いにと言っていいのか分からないけど、シャッター・シールドはアルゴニアンの従業員の扱いに問題があるらしく従業員の口が堅いなんて事はなかった。
 従業員の話によれば、本部にいるのはスヴァリス・アセロンというダンマーで取引から従業員の失敗まで全て帳簿に記録しているような女性だそうだ。
 そんな性格だからダンマーであってもシャッター・シールドからの信頼は厚く海運事業のあれこれを一任されているらしい。
「この道が歩きやすくありますように」
 私たちが礼を言うとアルゴニアンの従業員は仕事に戻っていった。

「どうやらスヴァリス・アセロンの帳簿を手に入れなきゃいけないみたいね」
 聞き込みの結果、目的がはっきりした事で行動がしやすくなった。
「う~ん・・・盗むとかそういうのはアタシは苦手なんだけど」
 ドロテアは、戦闘は得意でも忍び込んだり盗んだりはあまり経験が無いらしい。
「じゃあ、そこら辺は私に任せて。ドロテアは付いてきてくれればいいわ」

「なに、シャッター・シールドってすぐ隣じゃない!」
  シャッター・シルド家の海運事業本部は東帝都社の左隣にあった。
 もちろん、シャッター・シールド家自体は別な場所に本宅があるのだろうが・・・にしても隣なら隣とオルサス・エンダリオも教えてくれればいいものを。

 中に入るとダンマーの女性が出迎えた。彼女がスヴァリス・アセロンだろう。
「いらっしゃい、運送会社を探しているの?うちは東帝都社以上のサービスを提供しているわ」
 でしょうね、とは口に出さず適当に話を合わせる。
「ええと、近いうちにダガーフォールまで運んで欲しい物があるんだけど・・・話はこちらの女性がするんで私は倉庫の中を見せてもらっていいかしら?一応信頼できる仕事ぶりか見たいので」
「構いませんよ。ただ、あまり奥までは行かないで下さいね」
 商売の話と聞いてスヴァリス・アセロンは愛想よくなる。
(ちょっと!ダガーフォールまでの荷物って何?)
 ドロテアが聞いてないわよと耳打ちしてくる。
(適当に話をでっちあげて彼女の気を引いててくれればいいわ。)
(打ち合わせもなしにそんな無茶な!)
(大丈夫、ドロさんやれば出来る子だから)
 私は、ポンと肩を叩いて奥に向かった。

「あー・・・その・・・荷物というのはだ、ですね・・・ダガーフォールのドラゴン騎士団が・・・」
 ドロテアはスヴァリス・アセロンとテーブルを挟んで向かい合わせに座りしどろもどろで説明していた。
「お待たせ。」
 倉庫内を見て回った私は二人に声をかける。
「お・・・あ、ああ、早かったな」
 その口ぶりとは裏腹にドロテアが、まるで親を見つけた迷子のような顔でこちらを向く。
(なかなか見られない姿で、もうちょっと見ていたかったけどね)
 ちょっと意地悪く耳打ちする。

「大変堅実な仕事ぶりの様で、荷物がまとまりましたら改めて依頼にお伺いします」
 そう適当に誤魔化すと私たちはシャッター・シールドの本部から出た。
「お待ちしております」
 わざわざ下見に来るくらいだから大口の仕事だろうと誤解でもしたのかスヴァリス・アセロンは出口まで私達を見送ってくれた。

つづく

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